業務効率化の手段としてRPAが注目されています。RPAを導入することで大規模システムでは費用対効果の観点から効率化の対象外となってしまう少量多品種の業務を効率化可能です。
当記事では、RPAとは何か、RPAが得意な業務や不得意な業務、RPAを導入するメリットやデメリット、デメリットへの対策について解説をします。
RPAとは?
RPAとは「Robotics Process Automation」の略で、ロボットによるプロセス自動化を指します。
人がパソコン上で行う業務をロボットが覚えて再現ができる仕組みです。
RPAによりプロセス自動化をさせるためには、代行させる作業を”シナリオ”としてシステム上に登録する必要があります。
”シナリオ”は、代行させる作業をステップごとに示した作業書をイメージするとよいでしょう。
利用するRPAツールにもよりますが、画像認識機能のあるRPAであれば、パソコン上で人が行った作業を自動で覚えることができます。
コーディング等のプログラミング知識や高度な業務知見をもっていなくても、簡単に作成可能です。
得意なこととは?
RPAツールが自動化を得意とする業務特性があります。RPAツールが得意とする業務特性は以下の通りです。
- 得意なこと①:業務内容がきまっていて反復可能なこと
- 得意なこと②:大量データをシステム上で処理すること
得意なこと①:業務内容がきまっていて反復可能なこと
作業手順や実施タイミングが固定化されている作業の自動化が得意です。
例えば、定期的なスクレイピング、請求書の代行入力、経費精算や給与計算、報告書作成などが該当するでしょう。
特に定期的なスクレイピングなどは、個別にシステム開発をしていては費用対効果が合わないことが多く自動化に踏み切れない場合も多いです。
この点、RPAツールであれば、このような少量だけれども効率化の余地のある作業を費用対効果高く自動化できます。
得意なこと②:大量データをシステム上で処理すること
RPAは大量のデータを24時間365日処理することが得意です。
ロボットが代行しますので、人が稼働することが難しい深夜帯や土日祝日にデータ処理を行えます。
また、人よりも正確かつ速やかにデータ処理ができますので、大量データの処理も得意です。
苦手なこととは?
得意なことの多いRPAツールですが、一方で苦手なこともあります。苦手とする業務特性は以下の通りです。
- 苦手なこと①:意思決定が必要なこと
- 苦手なこと②:作業内容に細かな修正が多数発生すること
苦手なこと①:意思決定が必要なこと
RPAは意思決定を要する作業の自動化は苦手です。定型作業の自動化は得意なものの、事前に定義されていない作業について自己判断し進めることができません。
例えば、顧客名簿の作成業務上でメールアドレス欄に住所が記載されていた場合、RPAは誤った情報が入力されていると判断することができず、該当箇所の自動修正などを実施できないでしょう。
とはいえ、対策はあります。例えば、メールアドレス欄に半角以外が入力されていればエラーとして処理する、エラーの場合担当者にメールなどで自動通知するなどです。
このように苦手なことは確かにありますが、苦手であると認識したうえでシステム設計すれば十分に対策ができるでしょう。
苦手なこと②:作業内容に細かな修正が多数発生すること
RPAは事前に定義されたシナリオ通りの挙動しかできません。事前定義した定型業務内容が頻繁に変更される場合、RPAツールによる自動化は難しいでしょう。
RPAツール自体は細かな業務変更に対応することはできます。ただ、あまりに業務変更の頻度が高いとシステム修正に工数がかかってしまって、費用対効果が見込みづらくなる可能性があるのです。
RPA導入のメリットとは?
RPAツールを導入するメリットは以下の通りです。
- メリット①:定型業務の効率化
- メリット②:ミスの削減
- メリット③:リソースの効率化・コスト削減
- メリット④:社員のモチベーション向上
メリット①:定型業務の効率化
RPAは単調かつ定型業務を自動化し業務生産性向上を期待できます。
事前に定義のできる業務であれば、どのような業務であっても契約ライセンス内で自動化できますので、少量多品種な業務の生産性向上を期待できる点がメリットです。
2023/10に施行されたインボイス制度、2024/1に施行される改正電子帳簿保存法など、バックオフィスの業務負荷は高まる一方です。
一方で、コストセンターである管理部門への新規採用は稟議上、難しい場合も多いため、必然的に一人当たりの生産性を高めていく必要があります。
この点、RPAは高度なITリテラシーを保持していなくても、現行業務の効率化を期待できるため、工数をかけず簡単に業務効率化を推進できる点が最大のメリットともいえるでしょう。
メリット②:ミスの削減
単調かつ定型な業務であったとしても、長時間繰り返していればミスが生じます。データベースへの転記ミスやメールの送信先間違い、送信漏れなどが該当するでしょう。
このようなミスによって取引先の信頼を損なう、売上機会を失うなどのリスクがあるため、正確な作業には価値があります。
この点、RPAツールであれば定型業務をあらかじめ決められた手順で反復するためミスを削減できる点がメリットです。
メリット③:リソースの効率化・コスト削減
RPAにより定型業務に割くリソースを削減できます。結果、人件費や採用コスト、教育費など、定型業務が生じるあらゆるコスト削減を実現できるでしょう。
コスト削減ができるだけでなく、数人分の工数を他の価値生産を行う業務に再割り当てできる点がメリットです。RPAは365日24時間稼働ができますので、従業員が不在の時間も稼働し、本来人が行うべき仕事に割り当てる時間を創出します。
RPAでは代替が難しい企画やマーケティング、事業戦略など意思決定を伴う業務にリソースを割り当てるようにしましょう。
メリット④:社員のモチベーション向上
単調な業務の繰り返しは社員のモチベーションを低下させる要因となります。創造的な仕事がしたいと他社に転職する例を聞いたことがあるのではないでしょうか。
RPAにより単調かつ定型業務を削減することで、従業員を創造的な仕事に割り当てモチベーションの向上させることが期待できるのです。
もし現状、残業過多に陥っていれば従業員一人当たりのタスク量削減にも効果を期待できます。
残業時間の多さが従業員のモチベーション低下を招く場合も多いですので、RPAによる業務効率化は社員のモチベーション向上に効果があると判断できるでしょう。
RPA導入のデメリットとは?
RPAツールを導入することで単純作業を自動化し業務生産性を向上させられます。
一方で、RPAツール導入時には注意すべきデメリットが以下の通りありますので留意が必要です。
- デメリット①:業務がブラックボックス化する場合がある
- デメリット②:ITリテラシーが必要になる場合がある
- デメリット③:業務停止した場合の事前準備が必要
デメリット①:業務がブラックボックス化する場合がある
RPAは事前に設定したシナリオ通りに稼働します。つまり、RPAツール担当者が退職、異動した場合、シナリオの引継ぎが行われず、シナリオの内容がブラックボックスになる可能性がある点がデメリットです。
業務がブラックボックス化することで、「なぜ稼働中のロボットが必要なのか」、「ロボットを修正する場合、どの業務に影響があるのか」などが不明になるため、うかつに手出しができないシステムとなってしまう問題が生じるでしょう。
デメリットへの対策として、RPAツールを導入する場合には設計書の作成や引継ぎ手順のマニュアル化を行う方法もありますので、導入前に検討を進めておくとよいです。
デメリット②:ITリテラシーが必要になる場合がある
RPAツールを導入して既存業務を効率化させる場合、要件によってはSQLなどのプログラミング知識やスクレイピングの対象となるサイト内構造の理解など、ITリテラシーが求められる場合がある点がデメリットです。
デメリットへの対応策として、RPAツールベンダーが提供するサポートサービスの活用があるでしょう。
RPAツールベンダーの中には顧客の製品導入支援を目的として、導入伴走サービスを提供している場合があります。
また、導入伴走サービスまでなくても、サポート窓口を開設しテクニカルな疑問を随時解消できる仕組みがとられている場合があるのです。
ITリテラシーに不安を感じる場合にはサポートサービスの手厚さも確認ポイントになるでしょう。
デメリット③:業務停止した場合の事前準備が必要
RPAツールを導入後、運用していく中で予期せぬエラーなどによって、業務が止まってしまう場合があります。
RPAツールを導入する場合、多数のシステムと連携し作業の自動化をしますが、エラーによってすべての業務が止まってしまう場合がデメリットです。
デメリットへの対応策として、予期せぬトラブルへの対応方針を事前に決めておくことがあります。
エラーが発生した際の問い合わせ担当者を明確にしておく、エラー時に確認可能な資料を整理しておく等、いくつか事前準備が必要になると考えてください。
まとめ:メリットやデメリットを把握したうえで業務改革を推進しよう
RPAツールを導入することで定型作業の自動化が可能です。
定型作業を自動化することで、コストの削減やリソースの有効活用だけでなく、従業員のモチベーション向上まで期待できるでしょう。
一方で、対応策があるとはいえデメリットも一部存在しますので、事前に把握した上でRPA導入をご検討ください。