RPA(Robotic Process Automation)を導入することで、定型業務の自動化を期待できます。一方でRPAを活用し続けるためには運用保守業務が欠かせません。
運用保守を怠ったばかりに、予期せぬトラブルにあう場合もありますので、注意しましょう。
当記事では、RPAの運用保守で実施すべき事項、運用保守業務のポイント、必要な費用をご紹介します。
RPAの運用保守業務とは?
RPAツールの運用保守業務は、RPAボットが安定して効率的に動作し続けるための活動です。システムのアップデートや修正、パフォーマンスのモニタリング、ドキュメントの管理、スタッフの研修が含まれます。
運用保守業務を怠ると、ボットのエラーや故障が増え、ビジネスプロセスの自動化が妨げられ、セキュリティリスクが高まる可能性があるため注意ください。
適切な運用保守業務により、RPAツールの効果を維持し、ビジネスの成長を支援することができるでしょう。
RPAツールの運用保守業務で具体的に行うべきことは?
RPAツールの運用保守業務で実施すべき代表的な事項は以下の通りです。
- 実施すべき業務①:定期メンテナンス業務
- 実施すべき業務②:継続的なモニタリング業務
- 実施すべき業務③:ドキュメント更新と管理業務
実施すべき業務①:定期メンテナンス業務
RPAツールを継続的に利用していると以下いずれかのトラブルにあう場合があります。
- ハードウェア
- ソフトウェア
ハードウェアを起因としたトラブルであれば、パソコンの性能不足や故障が疑われるでしょう。一方、ソフトウェア起因トラブルであれば、アップデート対応やサポート問い合わせが必要です。
いずれにしろ、RPAボットの可用性を高めるために定期的なメンテナンスが必要になります。
定期メンテナンスを実施していたとしても、エラーが生じる場合はもちろんあるでしょう。
エラーが生じた際には、ボットの実行ログを分析し、エラーやバグを修正したうえで、再発防止策を継続的に実施していく点が求められています。
実施すべき業務②:継続的なモニタリング業務
ボットの動作中に発生するエラーや異常を検知し、迅速に対応する体制を整えましょう。そのうえで、稼働状況や処理速度をリアルタイムで監視し、パフォーマンスの低下や異常を早期に検出できるようにする必要があります。
監視対象として一般的に以下があります。
- ボットの稼働状況:
ボットが予定通りに動作しているか、エラーが発生していないかを監視します。 - システムリソースの使用状況:
CPU使用率、メモリ使用量、ディスク容量などを監視し、リソース不足による問題を防ぎます。 - トランザクションの完了状況:
ボットが処理するトランザクションの成功率や処理時間を監視し、パフォーマンスの低下を検出します。
継続的なモニタリングをしている中でエラーが検知されない場合もあるでしょう。
その場合でも実行ログを定期的に分析し、ボットの動作状況や改善点をレポートとしてまとめることで、エラーを回避できることがありますので実施してください。
実施すべき業務③:ドキュメント更新と管理業務
以下についてドキュメントの更新と管理が必要です。
- 設定変更とアップデートの記録
- 運用マニュアルの維持更新
- 知識共有とスタッフ教育
ボットの設定変更やソフトウェアアップデートの履歴を記録し、ドキュメントを常に最新の状態に保つ必要があります。
また、ボットの操作手順やトラブルシューティングのガイドラインを記載したマニュアルを定期的に見直す必要もあるでしょう。
上記のようなドキュメントを更新し管理したうえで、運用保守のノウハウを関係者に共有することでRPAツールの可用性を高めることが可能です。
RPAツールの運用保守業務のポイントは?
RPAツールの運用保守を実施する中で、忘れがちなポイントを以下の通りご紹介します。
- 運用保守ポイント①:ユーザートレーニングとサポート体制構築
- 運用保守ポイント②:バックアップ体制の構築
- 運用保守ポイント③:監査証跡の保持
- 運用保守ポイント④:関係者とのコミュニケーション
運用保守ポイント①:ユーザートレーニングとサポート体制構築
RPAボットの導入や更新後、エンドユーザーへの適切なトレーニングを提供することが重要です。ユーザーがボットの操作に自信を持ち、問題が発生した場合に基本的な対処ができることを想定しています。
また、ユーザーがボットの使用方法やトラブルシューティングの基本を理解しているか確認し、必要に応じてサポート体制を整えましょう。ヘルプデスクの設置やFAQの提供、オンラインサポートツールの利用などが一般的な方法です。
運用保守ポイント②:バックアップ体制の構築
RPAツールやボットの設定を定期的にバックアップすることで、システム障害やデータ損失が発生した場合に迅速に復旧できるようにします。
RPAツールやボットの設定、プロセス定義ファイル、使用されるデータなどを定期的にバックアップするのが一般的です。バックアップの頻度は、データの重要性や変更の頻度に応じて決定するとよいでしょう。
また、各企業の運用保守方針にもよりますが、バックアップファイルは、オンサイトとオフサイトの両方に保管することが推奨です。これにより、災害やシステム障害が発生した場合でもデータを復元できるようにします。
運用保守ポイント③:監査証跡の保持
RPAボットの動作履歴や変更履歴を記録し、監査証跡として保持します。これにより、後からボットの動作を追跡し、問題が発生した場合の原因究明が可能です。
また、ログファイルに改ざんされないように安全な場所に保管し、適切なアクセス制御を施すようにしましょう。
加えて、定期的に監査証跡をレビューし、コンプライアンス要件の遵守やセキュリティの確保してください。リスクを管理することで信頼性を高められるでしょう。
運用保守ポイント④:関係者とのコミュニケーション
経営陣、IT部門、エンドユーザー、RPA開発チーム、外部パートナーなど、RPAツールの運用保守関係者に対して、運用保守の状況、直面している課題、計画されている変更などを共有しましょう。関係者間での認識の齟齬を防ぎ、フィードバックを得ることができます。
また、プロジェクトの進捗状況や重要な情報を定期的にアップデートし、関係者に提供します。メールニュースレター、ダッシュボードの更新、ウェブポータルへの投稿などが一般的ですので自社用に運用を検討ください。
メンテナンス作業等にかかる費用
RPAツールの運用保守をする際、代表的な費用は以下の通りです。
- 運用保守費用①:人件費
- 運用保守費用②:ライセンス費用
- 運用保守費用③:システムのリプレイス費用
運用保守費用①:人件費
RPAを運用保守していくためには、継続的に人件費がかかります。代表的な内訳は以下の通りです。
- 運用チームの人件費
- 研修費用
- サポート体制の人件費
RPAツールの日常的な運用保守には、専任のスタッフやチームが必要です。システム監視、トラブルシューティング、メンテナンス作業などが含まれます。
また、RPAツールや関連技術の進化に伴い、運用チームのスキルを維持・向上させるための研修やトレーニングが必要です。この研修費用には外部研修の受講費用や内部トレーニングの実施費用が含まれるでしょう。
加えて、エンドユーザーサポートやヘルプデスクの運営にも人件費がかかります。ユーザーからの問い合わせに迅速に対応するためには、適切な人員配置が必要です。
運用保守費用②:ライセンス費用
RPAツールを継続的に利用していくためにはライセンスの維持費用が必要です。代表的なライセンス費用は以下の通りです。
- RPAツールのライセンス更新費用
- 監視・管理ツールのライセンス費用
RPAツールの使用権を維持するためには、定期的なライセンス更新が必要です。更新費用は、ツールの提供元や契約内容により異なりますので、RPAツール導入時に確認するようにしましょう。
また、RPAツールの監視や管理には、専用のツールが用いられることがあります。これらのツールの利用にもライセンス費用がかかる場合がありますので導入元までご確認ください。
運用保守費用③:システムのリプレイス費用
RPAツール自体以外にも運用保守上で費用が掛かる場合があります。代表的な費用は以下の通りです。
- ハードウェアの更新作業費用
- ソフトウェアのアップグレード作業費用
- システム移行作業費用
RPAツールを稼働させるためのサーバーやネットワーク機器などのハードウェアは、定期的な更新作業が必要になる場合があります。新しい機器の購入費用や交換作業費用が含まれるケースがありますので留意ください。
また、 RPAツール自体や関連するソフトウェアの機能向上やセキュリティ強化のためのアップグレード作業には、追加の費用がかかることがあります。提供元ベンダーとの契約内容にもよりますので、導入時に確認をしておきましょう。
加えて、既存のRPAツールを新しいプラットフォームに移行する際には、移行作業やデータ変換作業のための費用が発生します。
企業が使用しているRPAツールのバージョンが古くなり、新しいバージョンにアップグレードする必要がある場合や、異なるRPAツールへの移行を検討している場合などが該当するでしょう。
まとめ 定期的にメンテナンスしよう
RPAツールを活用することで定型業務の自動化が進み、生産性を大きく向上できます。一方で、運用保守業務をおろそかにしていると、予期せずRPAが停止する、情報が漏洩するなどのリスクがありますので、定期的なメンテナンスやモニタリングは必須です。
具体的にどのようにメンテナンスやモニタリングをしてよいかわからない場合には、各RPAツールベンダーが提供、または提携しているサポートやコンサルタントから助言をもらうようにしましょう。