RPAを活用することで定型業務の自動化が可能です。不動産業界においても、固有の問題を解決し、業務の効率化、品質の向上、顧客満足度の向上に大きく貢献できることから近年注目を集めています。
当記事では不動産業界でRPAが注目され活用されている理由、不動産業界におけるRPAの活用事例をご紹介します。
RPAは不動産業界でも注目?
日本の不動産業界は、人手不足に直面しています。この問題は、高齢化社会の進展、若年労働力の減少、および不動産市場の活況によって悪化しているのです。
国土交通省の「令和2年度不動産業の実態調査報告書」によると、不動産業における有効求人倍率は1.22倍であり、全産業平均の1.16倍を上回っています。これは、不動産業界が他の産業に比べて人手不足であることを示していると言えるでしょう。
参考データのURL: 国土交通省「令和2年度不動産業の実態調査報告書」
また、不動産業界では、中高年層の割合が高く、若年層の参入が少ないことも問題です。若年層の不動産業界への就職意欲の低さや、不動産業界のイメージ問題も影響していると考えられます。
このような状況の中、不動産業界では業務の効率化や自動化が求められており、RPAの導入が注目されています。
RPAによる業務自動化は、人手不足を補うだけでなく、作業の正確性を向上させ、従業員がより価値の高い業務に集中できるようにすることが期待されているのです。
不動産業界にRPAが進出している理由は?
不動産業界においてRPAの活用が進む理由は大きく4つあります。
- 理由①:人手不足の解消
- 理由②:定型業務の効率化
- 理由③:エラーの削減と品質向上
- 理由④:データ管理と分析の強化
理由①:人手不足の解消
日本の不動産業界は、特に地方での高齢化や若者の都市部への集中により、人手不足が顕著です。
RPAを導入することで、例えば、賃貸物件の管理における家賃の入金確認や滞納管理、物件の空室状況の更新などのルーティンワークを自動化できるでしょう。
これにより、人的リソースをより戦略的な業務や顧客対応に振り向けることが可能となり、人手不足を緩和が期待されているのです。
理由②:定型業務の効率化
不動産取引には多くの書類作成が伴います。例えば、賃貸契約の更新や新規契約の際には、契約書の作成、重要事項説明書の作成などが必要です。
RPAを利用することで、これらの文書をテンプレートから自動で生成し、必要なデータを自動で埋め込むことができます。これにより、契約プロセスの時間を大幅に短縮し、より多くの取引を効率的に処理することができるでしょう。
同様に定型作業であればRPAによって自動化できる可能性がありますので、身近な定型業務から自動化していくと、効果を感じやすいでしょう。
理由③:エラーの削減と品質向上
不動産取引は、契約書類の作成、顧客情報の管理、物件情報の更新など、多くのデータ入力と文書作成を伴います。
人手によるこれらの作業は、誤入力や記入漏れなどのミスを引き起こしやすく、それが重大な契約違反や顧客満足度の低下につながる場合がある点がリスクです。
この点、RPAを活用することで、定型業務であればミスなく実施できる上、エラーチェックの体制を構築すれば、ミスの早期発見も可能なことから、活用が進んでいます。
理由④:データ管理と分析の強化
不動産業界では、市場動向、物件情報、顧客データなどの分析が重要です。RPAを活用することで、これらのデータを自動で収集し、整理・分析することができます。
例えば、市場の価格動向を自動で追跡し、適切な物件価格を設定するための分析を行うことができるでしょう。これにより、より迅速かつ精度の高い意思決定が可能です。
導入メリット
不動産業界こそRPAの導入が推奨されています。不動産業界固有の課題に対してRPA導入が推奨される理由は以下の通りです。
- メリット①:複雑な法規制への対応
- メリット②:高い顧客対応ニーズ
- メリット③:地域性や物件の多様性への対応
- メリット④:電子契約プロセスの自動化
メリット①:複雑な法規制への対応
日本の不動産業界は、土地利用規制、建築基準法、不動産取引業法など、複数の法律や規制に従う必要があります。
RPAを導入することで、これらの法規制に基づいた契約書類の作成や法的文書の管理を自動化できるでしょう。例えば、RPAは契約書のテンプレートを使用して自動的に文書を生成し、法的要件に応じて必要な条項を挿入することができます。
これにより、人的ミスによる法的違反のリスクを低減し、コンプライアンスを確保することが可能です。また、法改正があった場合にも、RPAシステムを更新することで迅速に対応することが可能でしょう。
メリット②:高い顧客対応ニーズ
不動産業界では、顧客からの問い合わせへの迅速な対応や、物件情報の提供が重要です。
RPAを活用することで、顧客データベースからの情報抽出、問い合わせへの自動応答、物件情報の更新通知などの自動化ができるでしょう。
例えば、顧客からの問い合わせに対して、RPAが自動的に適切な物件情報を抽出し、返信することができます。これにより、顧客対応のスピードと正確性が向上し、顧客満足度の向上につながるのです。
メリット③:地域性や物件の多様性への対応
日本では、地域によって不動産の需要や価格が異なります。また、住宅、商業施設、工業用地など、多様な種類の物件が存在します。
RPAを導入することで、地域別や物件別のデータベースを効率的に管理し、顧客に合わせた提案を自動で行うことができるでしょう。
また、RPAを用いて市場データを収集・分析することで、物件の適正価格を迅速に査定し、市場動向に基づいた戦略的な販売が可能です。
これにより、顧客のニーズに合った物件の提供が可能となり、ビジネスの機会を拡大することができる点が利点とみられています。
メリット④:電子契約プロセスの自動化
2022/5の宅建業法の改正で、不動産業における多くの契約書においても電子契約の活用が可能になりました。その中で、電子契約の導入は、契約プロセスのデジタル化における重要なステップです。
RPAを活用することで、契約書の自動生成、署名プロセスの管理、契約完了後の文書管理などを効率化できるでしょう。
これにより、取引の時間を大幅に短縮し、顧客体験を向上させることができます。さらに、紙の契約書に比べて、電子契約は保管や検索が容易であり、長期的な文書管理の効率化にも寄与するできるのです。
不動産業界の活用事例
不動産業界固有の問題に対して、RPAを活用した事例を以下の通りご紹介します。
- RPA活用事例①:物件情報の更新作業の自動化
- RPA活用事例②:契約書類の自動作成作業の自動化
- RPA活用事例③:顧客データの整理作業の自動化
- RPA活用事例④:リース契約の更新作業の自動化
RPA活用事例①:物件情報の更新作業の自動化
不動産会社Aでは、物件情報の更新作業を手動で行っていましたが、これにより情報の遅延やミスが発生する点が課題でした。
そこで、RPAを導入し、物件管理システムと連携することで、価格変更、空室情報、新規物件の追加などが発生した場合に自動で情報を更新することに成功しています。
これにより、常に最新の情報を提供できるようになり、顧客満足度が向上しました。また、営業スタッフは更新作業から解放され、より重要な顧客対応や営業活動に集中できるようになっています。
RPA活用事例②:契約書類の作成作業の自動化
不動産会社Bでは、契約書類の作成に時間がかかり、人的ミスも発生しやすい点が課題でした。
RPAを導入することで、契約書のテンプレートを事前に設定し、必要な情報(顧客名、物件情報、契約条件など)を自動で入力して契約書を生成するシステムを開発しています。
これにより、契約書の作成時間が大幅に短縮され、ミスの発生率も低下しました。さらに、デジタル化された契約書は、電子署名や電子保管が可能となり、業務の効率化に大きく貢献した点が特徴的な事例です。
RPA活用事例③:顧客データの整理作業の自動化
不動産会社Cは、顧客データの管理が煩雑で、重複データや誤りが頻繁に発生する点が課題でした。
この課題に対して、RPAを利用して、顧客データベースを定期的に自動スキャンし、重複データの検出と削除、誤った情報の訂正を行うシステムを導入しています。
これにより、データの正確性と信頼性が向上し、顧客対応の質が向上しました。また、データの自動整理により、顧客分析やマーケティング戦略の策定においても、より精度の高い情報を活用できるようになった事例です。
RPA活用事例④:リース契約の更新作業の自動化
不動産管理会社Dは、多数の賃貸物件のリース契約更新を管理しています。契約更新作業の際には、契約条件の確認、更新通知の送付、新しい契約書の作成など、多くの手間がかかっている点が課題でした。
RPAを導入することで、契約更新作業のプロセスを自動化しています。契約満了日が近づくと、RPAツールが自動で更新通知を送付し、条件に変更がない場合は新しい契約書を自動生成する仕組みです。
これにより、手間と時間を大幅に削減し、契約更新の効率を向上した点が特徴的な事例でしょう。
まとめ RPAを活用しよう
不動産業界ではIT重説や電子契約の利用が解禁されたことから、急速に効率化が進んでいる業界です。加えて、RPAを活用することで、不動産業務は大きく効率化、ミスの低減を期待できるでしょう。
とはいえ、RPA活用に抵抗のある事業者も多いようです。まずは安価なデスクトップ型RPAツールを活用して、身近な定型業務の効率化から始めてみてはいかがでしょうか。使い始めることが重要です。