近年、業務効率化を期待してRPA (Robotic Process Automation) を導入する企業が増えていますが、大企業と比較すると中小企業にはまだまだRPAの導入が進んでいないという現状もあります。
もちろんRPA導入は多くの中小企業にとってリスクもありますが、多くの中小企業がRPAを導入していない分チャンスであると捉えることができるでしょう。
そのため、こちらの記事では比較的導入率が低いとされている中小企業こそRPAの導入が必要とされる理由や導入によるメリット、リスクや注意点、事例などをわかりやすく紹介していきます。
中小企業のRPA導入率の現状とは
中小企業は実際にRPAの導入率が大企業に比べて、どのようなものなのか見ていきましょう。
日本の企業のRPA導入率はこちらです。
(2019年11月時点) | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
RPA導入済み | 51% | 25% |
RPA導入検討中 | 30% | 44% |
RPA未導入 | 19% | 30% |
2019年のデータではありますが、日本の大企業にてRPAを導入済みの企業は51%であるのに対し、中小企業では25%と約1/2の導入率となっていることが上記の表から見て取れます。
やはり実際に、中小企業のRPA導入の遅れは大企業と比較すると顕著なようです。
では、中小企業がRPAを導入するべき理由などを見ていきましょう。
中小企業こそRPA導入が必要な理由とは
上記の通り大企業に比べて、RPA導入が進んでいるとは言い難い中小企業。
そんなRPA導入率が大企業に比べて低い中小企業にこそRPAが必要だと言われる理由は以下の通りです。
理由①:業務効率化の促進
多くの中小企業において問題と言われている業務の効率化がRPAの導入によって解決できることが期待できます。
RPA導入に伴い、業務の見直しやマニュアルの作成などを行うことで業務を効率化。
また、簡単なルーティンワークなどをRPAに任せることで分業化を図ることができ、より効果的な業務効率化を実現することが期待できます。
この業務効率化により、多くの中小企業が抱えていると言われている人手不足や長時間労働といった問題を解決することが可能でしょう。
理由②:生産性の向上
生産性の向上という効果もRPAを導入することで、期待することができます。
RPAの導入によって業務の自動化を達成することで簡単な作業に時間を割く必要がなくなるため、コア業務に多くの時間を割くことができるようになり、多くの企業にとって悩みの種となっている生産性という問題を改善、向上させてくれるでしょう。
また、人間のように不注意に起因するミスなどが起こりえないため、更なる生産性の向上に期待を持てます。
さらに、RPA導入に伴う業務の自動化、見える化を通して業務の属人化という中小企業に多いと言われる問題を解決し、生産性の向上を達成することができるでしょう。
理由③:コストの削減
RPAは人間の代わりに単純作業を行ってくれるようなツールです。
そのため、多くの中小企業が直面すると言われる労働時間が削減され残業代などを払う必要がなくなる、また人材育成の費用も削減することができるというメリットに期待が持てます。
もちろん、RPA導入の際やメンテナンス費用は掛かりますが、長い目で見ると大きなコストの削減につながるでしょう。
中小企業にとってのRPA導入リスクと対策
これまで、中小企業がRPAを導入すべき理由について紹介してきましたが、以下では中小企業がRPAを導入した際に起こりうるリスクとその対策について解説します。
リスク①:野良ロボットの発生
中小企業がRPAを導入した際の起こりうるリスクは、管理が行き届いていないRPAツール:「野良ロボット」が発生してしまう可能性と言えるでしょう。
中小企業の場合、従業員が多くない場合が多いため、RPAツール管理者の退職などによって野良ロボット化する可能性が考えられます。
対策①:運用体制をあらかじめ整えておく
上記であげた野良ロボット化というリスクへの対策としては、運用体制をあらかじめ整えておくということがあげられるでしょう。
具体的には、RPAツール導入前に管理者を複数決めておくことや、RPAツールの利用方法や利用する業務の共有などを進めていくことが重要となります。
リスク②:無駄なコストの増加
2つ目のリスクは無駄なコストの増加です。
利用したい業務に対してスペックが高すぎるRPAなどを導入してしまうと、利用するサービスが限定的で使いこなせず無駄なコストとなってしてしまう可能性があります。
対策②:費用対効果を考える
費用対効果を考えることが無駄なコストの増加への対策として挙げられます。
どの業務に利用をしたいのかを明確にし、そこからその業務にあうサービスを導入するという手順を踏むのがよいでしょう。
中小企業のRPA導入事例
以下から、実際の中小企業RPA導入事例を見ていきましょう。
中小企業のRPA導入事例①コールセンター
ある中小企業のコールセンターでは、コールセンターに日々集まるデータを管理マネージャーが毎日30分ほど時間をかけ、データ集計システムからデータ集計ファルダに転記していました。
しかしその業務をRPAに任せるようにしたことで、1日30分、年間120時間の時間短縮が可能となりました。
中小企業のRPA導入事例②建設会社
ある中小企業の建設会社では、顧客情報の管理や発注書、見積書の作成などの膨大なバックオフィス業務を現場監督が手作業で行っていました。
それにより、入力ミスや残業代の増加などあらゆる問題が積み重なっていました。
しかしRPAを導入し、それらのバックオフィス業務を任せることで月約40~60時間の業務時間削減につながり、現場監督の負担を減らすとともに本来のコア業務に集中することのできる環境づくりを達成することができたという事例があります。
RPAツールの選び方
RPAツールの選び方①まずはRPAの種類を理解する
クラウド型
クラウド型は、主にクラウドにあるアプリケーションやデータなどに作用するRPAツールです。
そのため、モバイルやデスクトップに保存されたものには利用ができません。
このクラウド型RPAはクラウドに多数の端末をつなぐことができる場合が多いため、大規模な組織に向いていると言えます。
気になる点は、クラウドですべてを行うためサーバー攻撃などを受ける可能性があるというセキュリティ面があげられるでしょう。
サーバー型
サーバー型は、自社でサーバーを設置し、そこでRPAを作動させるといったRPAツールです。
こちらは、セキュリティの心配はありませんが自社に大規模なサーバーを設置する必要があるためコストは高くなるという注意点もあります。
デスクトップ型
デスクトップ型は、RPAツールを各デスクトップにインストールし稼働させるタイプのRPAツールです。
1台ずつ導入するものでありスモールスタートに向いているため、中小企業にはおすすめのツールであると言えるでしょう。
また、各デスクトップに稼働するという特徴のためセキュリティの心配がないという点も魅力的であると言えます。
詳しくRPAツールの種類について知りたい方はこちらを参照してはいかがでしょうか。
RPAツールの選び方②操作性
RPAツールを選ぶうえで、操作性は非常に大切であると言えます。
特に、プログラミング技術などのデジタル技術に明るくない人材にとっては簡単に利用できる初心者向けツールを選ぶということが大切となるでしょう。
RPAツールの選び方③サポート体制
手厚いサポートも大切であると言えます。
RPAツールやサービスによって、チャンネル体制や相談に対応できる時間、課金が必要かどうかなどの違いがあります。
それらの体制を詳しく調べて、自社にとって必要なサポート体制のあるサービス選ぶということが大切になるでしょう。
RPAツールの選び方④価格
価格もRPAツールを選ぶ際に、重要な要素となるでしょう。
RPAツールやサービスによって、価格は大きく違いがあります。
そのため、初めてのRPAツールであれば、低額なサービスから始めるのが良いと言えます。
まとめ
これまで、RPA導入率が低い中小企業にこそRPAツールが必要とされる理由や、リスクと対策、また中小企業のRPA導入事例、ツールの選ぶ基準などを解説してきました。
今後もこのRPAツールを積極的に活用していくという流れは、日本だけでなく世界的にも続いていくとみられています。
RPA導入があまり進んでいないという現状がある日本の中小企業も、本格的にRPA導入に向け検討していくとよいのではではないでしょうか。