企業で必須業務となっている給与計算業務はRPAにより自動化できます。RPAを導入することで給与計算業務だけでなく、経理業務など関連業務まで効率化できることから、幅広い用途で導入が進んでいくでしょう。
当記事では、RPAにより給与計算を自動化するメリット、給与計算業務を自動化した事例をご紹介します。
RPAで給与計算の自動化は可能?
結論から言うと、RPAで給与計算の自動化は可能です。
そもそも、給与計算業務を自動化する方法は大きく以下2点あります。このうち自社要件に適した方法を選択しましょう。
- 方法①:会計システムを導入する
- 方法②:RPAツールを導入する
方法①:会計システムを導入する
給与計算を自動化するため、計算のもとになる人事情報や勤怠情報をデータベース上で管理する必要があります。そこで導入が必要になるのが「会計システム」です。
会計システムの中には、給与計算機能まで含んだタイプのシステムもあり、このタイプであれば会計システム単体で給与計算の自動化を実現できるでしょう。
方法②:RPAツールを導入する
会計システムの中にはもちろん、給与計算機能まで含まないタイプも存在します。このタイプの場合、RPAを活用することで、給与計算業務の自動化が可能です。
会計システム上にある人事や勤怠データなどを元にRPAが自動で給与計算を行います。また、RPAの活用の幅は広く、銀行口座への振り込みや給与明細の作成などまで自動化できるでしょう。
すでに給与計算機能を搭載した会計システムを導入していたとしても、給与計算業務周りの業務まで自動化を考えて、RPAを導入した事例は多数ありますので、RPAへの期待値を明確にして導入をご検討ください。
RPAで給与計算を自動化する3大メリット
RPAを導入して給与計算を効率化するメリットが以下の通り3つあります。
- メリット①:給与計算の正確性および従業員の満足度向上
- メリット②:セキュリティやコンプライアンスの強化
- メリット③:柔軟なシステム対応が可能
メリット①:給与計算の正確性および従業員の満足度向上
給与計算はミスが許されず正確性が求められる業務です。この点、給与計算業務自体は定型かつ単調業務であるため、ヒューマンエラーが起きやすい点が課題になるでしょう。
この点、RPAであれば事前に設定された手順通りに処理されますので、給与計算の正確性向上が期待できます。
シナリオによっては、給与計算の際に収集した勤怠データなどに対して自動で欠落データや不正確なデータの検知を行うこともできるでしょう。データベース上の正確性向上が期待できる点も魅力です。
給与計算プロセスが自動化され、エラーが減少することで従業員は正確な給与明細を受け取り、納得のいく給与計算が行われていると感じます。
これは従業員の満足度を向上させ、組織全体の生産性上昇を期待可能です。
メリット②:セキュリティやコンプライアンスの強化
給与計算を行う際の元情報は人事情報や勤怠情報など機密性の高い情報を扱うため、セキュリティが重要です。この点、人手による事務作業がある場合、情報の漏洩がリスクとして常につきまとうでしょう。
一方、RPAであればシステム上で自動化できる上、RPAツール自体をセキュアな環境で動作させ、二要素認証などによりデータを保護することでセキュリティやコンプライアンスにまつわるリスクを低減できます。
メリット③:柔軟なシステム対応が可能
RPAを利用することで、異なる企業規模や業務内容を抱える企業であっても、柔軟に設定を変更することで給与計算の自動化が可能です。
RPA自体が業界や職種を限定した使い方ではないため、給与計算の自動化に留まらず経理業務などの関連業務の自動化まで見据えやすい点もメリットといえるでしょう。
例えば、給与計算以外にRPAを活用する事例として以下があります。
- 日時売上の算定・自動レポート化
- 入金消込業務の自動化
- セミナーアンケート結果の自動集計・レポート化 など
給与計算を自動化する際の注意点
給与計算はRPAにより自動化ができます。一方で自動化する際に注意点がありますのでご確認ください。
- 注意点①:個人情報の取り扱いに気を付ける
- 注意点②:正確なシナリオ設定が必要
- 注意点③:継続的なメンテナンスが必要
注意点①:個人情報の取り扱いに気を付ける
給与計算で利用する情報には従業員の機密情報が含まれるため、RPAを開発する際にはデータのプライバシーとセキュリティを確保する必要があります。
データの暗号化、アクセス制御、セキュリティポリシーの実施など忘れずに検討するようにしましょう。またデータの可用性の観点からバックアップ計画も必要です。
RPAシステムに障害が発生する可能性を考慮して、手動プロセスへの切り替えが可能なバックアップ計画を用意しておきましょう。データ損失を防ぐ観点から、適切なバックアップと災害普及策の検討まで実施できれば十分です。
注意点②:正確なシナリオ設定が必要
給与計算には法律や税制など様々な規則が複雑に影響します。RPAを導入する場合、これらの要件を加味したシナリオ作成をする必要がある点に注意ください。
間違ったシナリオ設定は計算ミスや法律違反、従業員の不満を招く可能性があります。
RPAベンダーの中には顧客のシナリオ作成をサポートするサービスを提供しているツールもありますので、自社のみでシナリオ作成することに不安を感じる場合には、サポートを適時受けるようにしましょう。
注意点③:継続的なメンテナンスが必要
給与計算のシナリオは継続的にメンテナンスする必要があります。
法律や税制は頻繁に変更されるため、これらの変更点をシナリオに反映させる必要があるからです。
また、継続的にRPAツールの稼働を監視し、もしエラーがあれば迅速に解消する必要があるでしょう。
さらに、よくある問題として”野良ロボット”問題があります。何のために稼働しているのか、どのようなシナリオで稼働するのかなどが不明なまま放置されたロボットです。
放置することで思いもよらぬ影響を業務に与える場合があるため、継続的なメンテナンス時には不要なロボットは廃止する、改善が必要なロボットは改善するようにしてくことが重要になります。
具体的な導入事例4つ
給与計算の自動化にRPAを活用した事例を4つ、ポイントを含めご紹介します。
- 事例①:社員情報の登録業務自動化
- 事例②:社会保険・労働保険手続きの電子申請業務自動化
- 事例③:社会保険・労働保険手続きの区分書・コメント取得業務自動化
- 事例④:給与明細の発行自動化
事例①:社員情報の登録業務自動化
給与計算の自動化をするためには、事前に会計システム上などのデータベースを整理する必要があります。この整理のため、社員からWeb経由で収集した住所や扶養家族、口座などの情報を給与マスタ上に登録してください。
一方、この業務を手動により対応する場合、手入力によるミスが生じる上に、マスタ更新の都度、5~10分程度の時間がかかる点が課題になる場合があります。
この点、Web上で取得した情報を自動で会計システムなどに転記する仕組みをRPAで実現することで入力ミスをなくし、担当者の工数削減に成功させることができるでしょう。
事例②:社会保険・労働保険手続きの電子申請業務自動化
社員が入社する都度、社会保険や労働保険などの手続きを行う必要があります。この手続きはWeb上で予約手続きができないこともあり、都度申請を行う必要があるでしょう。
1件ずつ手動で申請を行う必要があり、1件当たり5~10分程度の工数がかかります。この点、会計システム上などに入社情報を登録しておくことで、期日毎に自動で社会保険や労働保険などの手続きを実施させることができます。
電子申請業務を自動化することで担当者は結果のチェック作業のみを実施すればよいため、ミスおよび工数の削減が実現できるでしょう。
事例③:社会保険・労働保険手続きの区分書・コメント取得業務自動化
事例②の社会保険や労働保険を電子申請した場合、給与システム上に公文書やコメントが届く場合があります。
これらのコメントや公文書の見落としは許されず素早く確認し対応を取る必要があることから、システム上に何度も公文書やコメントが届いているか確認する手間が生じるでしょう。
1件当たり5~10分程度の工数がかかるようです。この確認作業をRPAにより自動化することで、日時で確認作業を行い、もし公文書やコメントが来ていればリマインド通知を行う運用が実現できます。
担当者は通知をチェックするだけでよいので、工数を大きく削減できるでしょう。
事例④:給与明細の発行自動化
給与計算は実施するだけでなく、計算結果を従業員に通知する必要があります。給与明細を発行し、対象社員にメール送付している企業も多いのではないでしょうか。
この点、RPAを活用することにより特定日で給与明細を自動発行し、PDF保存、対象者へメール添付で送付という一連の流れを自動化することができるでしょう。
ある事例では、明細出力から印刷、封入作業まで丸一日かかっていたところ、実際の作業時間が30分(結果確認時間)まで短縮した事例もあります。
この事例の場合、工数の削減だけでなく、紙の印刷費や郵送代といったコスト削減まで成功している点が特徴的です。
この記事のまとめ
給与計算をRPAにより自動化できます。自動化することで給与計算の正確性向上や計算に伴う工数削減など多数のメリットがあるでしょう。
一方で、給与計算ロジックの定期的な見直しや個人情報の丁寧な扱いなど、一部注意点もありますので、事前に把握した上でRPA導入をご検討ください。
RPAを導入することで給与計算に限らず定型業務の自動化が可能です。ぜひRPAを導入して給与計算をはじめとする自社内のあらゆる定型業務を自動化するようにしましょう。