業務の自動化を検討する場合、RPAツール導入とPythonなどのプログラミング言語を利用した手法のいずれかを選択すべきか悩まれる場合も多いようです。
いずれの手法にも一長一短があり、業務の自動化に着手する前に違いを抑えて自動化の方針を固めるようにしましょう。
当記事では、RPAツール導入とPythonなどを利用したシステム開発の違い、RPAツール導入とシステム開発の一般的な進め方について解説をします。
RPAツール導入とシステム開発の違いとは?
RPAツール導入とPythonなどのプログラミング言語を利用したシステム開発では、採用した場合のメリット・デメリットが異なります。
RPAツールを導入するメリット・デメリットとは
メリット
- 迅速な導入:既存のシステムに変更を加えることなく、短期間で業務の自動化を実装できます。
- ノンコーディング:エンジニアのようにプログラミングスキルがなくても、マウス操作で業務の自動化を設計できます。
- システム間連携:異なるアプリケーションやシステム間で情報転送や操作が容易に行えます。
デメリット
- スケーラビリティの限界:複雑なロジックや大規模なデータ処理には向いていません。
- フロントエンド依存:ユーザーインターフェースの変更に弱く、安定性に影響を受けやすいです。
RPAツールによる自動化がおすすめな業務とは
現場ユーザーが独自に自動化を進めていきたいのであれば、RPAツール導入を採用するとよいでしょう。
ここまで紹介したRPAツール導入によりメリット・デメリットを踏まえて、システム開発と比較して、業務自動化がおすすめな業務は以下の通りです。
- データ入力・エクセルへの転記業務
- 定期的なレポート作成業務
上記はいずれも現場部門で多数生じる業務であり、かつ、定型業務であることからRPAツール導入による業務自動化を実現できます。実際に導入事例も多いです。
必ずしも上記のようにシンプルな要件の業務ばかりではありませんが、現場部門主導でRPAツール導入を進めるのであれば、まずは上記のようなできうることから自動化してはいかがでしょうか。
システム開発を導入するメリット・デメリットとは
業務の自動化をする場合、RPAと比較されることが多いのがPythonを利用したシステム開発の手法です。
Pythonを利用するメリット
- 柔軟性: 汎用プログラミング言語であるため、さまざまな種類の業務自動化に対応できます。
- スケーラビリティ: 複雑なロジックや大規模なデータ処理にも対応できる高い拡張性を持っています。
- コミュニティとサポート: 広大なコミュニティと豊富なライブラリにより、多様なニーズに応えることができます。
- バックエンド自動化: データベース操作、API連携、バッチ処理など、バックエンドでの業務自動化に強みがあります。
Pythonを利用するデメリット
- 学習曲線: プログラミングスキルが必要であり、初心者には学習が必要です。
- 開発時間: 複雑な自動化を実装する場合、開発に時間がかかることがあります。
- デプロイメント: スクリプトのデプロイメントや環境構築がRPAツールに比べて複雑になることがあります。
システム開発による自動化がおすすめな業務とは
会社規模でデータ取得・分析の流れなどを自動化する場合であれば、Pythonなどを利用したシステム開発がおすすめです。
- データ分析・機械学習
- ウェブスクレイピング
Pythonはデータサイエンスや機械学習に広く使われており、Pandas、NumPy、SciPy、Scikit-learnなどのライブラリを利用して高度なデータ分析や予測モデルの構築が可能です。
RPAツール導入によっても分析業務の自動化は可能ですが、Pythonを利用したシステム開発の方がより高度な分析の自動化を実現できます。
また、PythonはBeautiful SoupやSeleniumなどのライブラリも保持しており、ウェブページからのデータ抽出も得意です。
RPAツール導入でも実現できますが、こちらもデータ抽出に高度な要件がある場合にはPythonによるシステム開発を検討した方がよいでしょう。
RPAツールの導入から運用の手順とは?
RPAツールを導入する場合、以下の手順を取るケースが多いです。
- RPA手順①:シナリオ設計
- RPA手順②:シナリオ実装
- RPA手順③:シナリオテスト
- RPA手順④:保守・業務運用
RPA手順①:シナリオ設計
最初に自動化する業務プロセスを選定が必要です。高い頻度で繰り返され、定型業務が適しています。RPAツールの導入直後であれば、特に小規模かつシンプルな業務プロセスを選択するとよいでしょう。
次に選定した業務プロセスの詳細なフローチャートを作成します。業務プロセスを細かなステップにわける作業です。この過程では、条件分岐や例外処理まで念頭において、検討を進めてください。
最後にここまで検討したフローチャートを元に自動化するプロセスの範囲を特定します。手動で行う必要がある部分と自動化可能な部分を明確に区分してください。
ここまで終了した段階か、これ以前の段階で業務担当者と認識齟齬がないか確認することが重要です。シナリオ設計の段階で認識齟齬をなくし、手戻りのない実装を目指しましょう。
RPA手順②:シナリオ実装
RPAツールの選定が済んでいない場合には、開発に使用するRPAツールを選定します。UiPath、Automation Anywhere、Blue Prismなどのソフトウェアが市場シェアが高く一般的なようです。
次に導入したソフトウェア上のグラフィカルインターフェースを使用し、前述で検討したフローチャートに基づいてシナリオを実装していきます。
各ステップで必要なアクション(クリック、入力、データ取得など)を設定し、条件分岐やループなどの制御構造を組み込みましょう。
RPA手順③:シナリオテスト
実装したシナリオの各コンポーネントが正しく動作するかを個別にテストします。シナリオを実装した際に実行する場合の多いテストは以下の通りです。
- 単体テスト
- 結合テスト
- 本番データテスト
- 耐久テスト
- UAT
各テスト概要については、割愛しますが特に重要なのはUAT(ユーザーアクセプタンステスト)です。
これは実際のユーザーによるテストを行い、自動化されたプロセスがビジネス要件を満たしているかを確認することを目的とします。
UATの段階で業務担当者と認識がずれていると大きく手戻りが生じますので、可能であればUAT以前の過程で認識齟齬を解消し、手戻りの少ない実装を目指しましょう。
テストを経て問題がなければ、シナリオを本番環境にデプロイ (設置) します。
RPA手順④:保守・業務運用
本番環境での運用を開始した後、定期的にシナリオのパフォーマンスを監視し、必要に応じてメンテナンスや修正を行います。
特にRPAを担当していた業務担当者が変更されるタイミングには注意が必要です。各シナリオが何を目的として動いているのか等の引継ぎがうまくいかない場合、野良ロボットが生じる場合があるでしょう。
野良ロボットが生じることで、意図しない挙動をするロボットの発生や業務ストップが生じるケースがありますので、注意ください。
システム開発の手順とは?
RPAツールによる自動化に対して、システム開発による自動化の手段としてPythonが利用されるケースがあります。Pythonを利用した場合のシステム開発手順は以下の通りです。
- システム開発手順①:要件定義と設計
- システム開発手順②:コーディング・テスト
- システム開発手順③:デプロイメントと運用
システム開発手順①:要件定義と設計
自動化したい作業の目的と範囲を明確にし、問題点を特定します。その上でどのような機能が必要かをリストアップし、優先順位をつけましょう。
要件に対して、使用するPythonのバージョンや外部ライブラリ、フレームワークを選定します。加えて、モジュールやクラスの設計を行い、全体のシステム構造を決定してください。
要件にシステム連携が含まれる場合、同時に外部システムやデータベースとの連携方法を定義も必要です。忘れずに定義するようにしましょう。
システム開発手順②:コーディング・テスト
コーディングに入る前に、Pythonの開発環境をセットアップし、必要なライブラリをインストールしましょう。その上で、設計に基づいてプログラムを記述します。可読性と再利用性を意識したコードを心がけてください。
コーディングが終了したらテスト工程に入ります。テストの内容はRPAツールにおけるシナリオ実装と同様です。上述を参照ください。
テスト結果や他開発者によるコードレビューを元に、コードの品質を向上させるために、構造を改善したり、冗長な部分を削除します。
システム開発手順③:デプロイメントと運用
検証環境システムに対して、本番環境システムに合わせた設定を行い、デプロイメント (配置) の手順を確認します。検証環境システム上のプログラムを本番環境に展開し、動作を確認します。
システムの稼働後、システムの動作を監視し、エラーや異常をログに記録します。定期的にプログラムを更新し、バグ修正や機能追加を実施していきましょう。
また、システムのパフォーマンスを監視し、必要に応じて最適化も必要です。加えて、セキュリティの脆弱性に対処し、定期的なセキュリティアップデートも必要ですので、忘れず実施ください。
まとめ 定型業務を自動化して工数を削減しよう
RPAツール導入とシステム開発のいずれの手法をとっても、業務の自動化は実現できます。ただし、いずれの手法も一長一短があるため、各手法の特徴を理解したうえでのシステム活用が重要です。
もし、身近にあるシンプルな定型業務の自動化を希望するのであれば、RPAツールの導入で十分である場合が多いです。まずは社内の身近なところの定型業務を自動化して工数削減を目指してみてはいかがでしょうか。
無料でトライアルができるソフトウェアもありますので、トライアルから始めてみるとよいでしょう。
以下から、実際に無料トライアルも用意されているRPAツールを見ていきましょう。